" R1 V2 " と " R2 Pro " ─ 違いを徹底比較
Aillio Bullet(アイリオ・バレット)本体の購入を検討されている方に向けて、公式仕様と公開焙煎ログの実測データにもとづき、2機種の違いを正確に整理しました。
※本サイトでは焙煎機自体の販売はしておりません
01. 公式仕様で異なる16項目
※1 R1 V2の排気ファン段数は資料間で表記が割れており(仕様欄は12段、マニュアル本文・RPM表・デッドマン記述はF9が上限)、本書は実機確認のうえF0〜F9として扱っています。
※2 豆の最高温度は仕様値としては両機種とも245℃で同一ですが、保護動作の仕様は異なります。R1 V2は「245℃で誘導加熱を停止(ErC1)」と公式に明記される一方、R2 Proの245℃は仕様値にとどまり、実際の保護動作はIBTS 320℃到達時に自動で冷却モードへ移行する仕組みです。
02. 完全に同一の共通部分
Aillio CEOが「ドラムと素材は完全に同一」と明言している通り、焙煎の物理的な土台は共通です。
ドラムと気流が同一である以上、伝導主体の熱物理・RoR単調下降・「予熱=ストック、P=フロー」といった原則は、機種をまたいでそのまま通用します。
03. "R2 Pro"にしかない機能
R1系には存在せず、R2 Proにのみ搭載されている機能です。単なるスペック差ではなく、実際の運用にどう効くかまで解説します。
FlowSense ── 気流を一定に保つ機構
差圧センサーで気流を検知し、F1〜F12の各設定ごとに気流量を一定に保ちます。実測ではF1=2.60からF11=54.9まで、ドラム温度が150℃変化しても差圧の四分位幅は±1%以内という高い再現性が確認されています。
実用性:R1系では、同じF値でもフィルターの汚れや外部ダクトの状態によって実際の風量が変動していました。R2 Proでは「同じF値=常に同じ気流量」が成り立つため、焙煎記録の再現性そのものが上がります。
Quick Clean ── マグネット式フロントパネル
ネジ1本でコントロールハウジングを取り外し、IBTS(赤外温度センサー)のレンズに直接アクセスできます。IBTS自体もネジ2本で固定され、シール性が向上しています。
実用性:1ハゼのIBTS温度が同条件で198℃を下回り始めたら、レンズの汚れが疑われるタイミングです(Aillio公式の清掃判定基準)。R2 Proはこの清掃・メンテナンスに必要な分解が、工具1本・ネジ1本で完結するよう設計が見直されています。
Back-to-Back Roast Mode ── 連続焙煎モード
冷却動作中に、次のバッチの予熱をF1で自動的に開始します。バッチ間の待ち時間はおよそ1〜2分に短縮されます。
実用性:複数バッチを連続して焼くワークショップやカフェ用途で、待機時間のロスが減ります。連続焙煎の1バッチ目が不安定になりやすい「1バッチ目問題」の前提条件も変わるため、本の第8章の運用にも影響します。
IBTS Calibrate ── 温度センサーの補正機能
設定メニューからIBTSの読み取り温度を補正できます(1ステップ=0.1%、+25で1ハゼ温度が約5℃上昇)。FW66以降のメニューに存在しますが、Aillio公式のFunction List文書には現時点で掲載されていません。
実用性:個体差やセンサーの経年変化による温度のズレを、実測との照合で補正できます。実際に2026年1〜2月には一部個体でIBTSが最大15℃高く読む問題が発生し、ファームウェアFW159で修正されました。この補正機能はそうした個体差を自分で追い込むための手段になります。
Proクーリングトレイ
最大1,200gに対応し、シリコン製の撹拌アームとC0〜C5の5段階冷却設定を搭載。1kgバッチであれば最短2分で冷却が完了します。
実用性:大バッチを焼いても冷却がボトルネックになりにくく、Back-to-Back Roast Modeと組み合わせることで連続焙煎の回転率が上がります。
R2 Proが自動で記録するデータ
積算投入エネルギー・差圧・絶対大気圧・熱風温度・機内湿度・実ワット数・全ファン回転数・IGBT温度を機体が常時計測し、USB Type-C/Wi-Fi経由で送出します。
実用性:これまで焙煎記録として手動で残すか、諦めるしかなかった項目の多くが自動で残ります。本の第8章「再現性を作る」で扱う記録項目のうち、複数がR2 Proでは機体側にすでに記録されています。
04. 実測データで見る違い
RoastWorld公開ログの統計解析(R1/R1 V2 約211万件、R2 Pro 約19万件)にもとづく、投入量別の実運用値(予熱温度・ドロップ時間・1ハゼIBTS)です。
R2 Proは700〜1,000gでR1 V2より予熱が5〜10℃低い傾向。P側に余裕がある(R1 V2はP9で飽和するため予熱で補う必要がある)ためと考えられます。
500gクラスでは、実質的な差はほぼありません。総時間の差はわずか−1.6%です。差が明確になるのは800g以上で、1.2kgでは総時間が−16.7%まで縮まります。
05. どちらを選ぶか
普段の投入量が500g前後を中心とする方にとって、実測データ上の到達時間の差はごくわずかです。1,500Wという出力上限に対して、この投入量ではまだ十分な余力があるためです。
一方、800g以上、特に1kgを超えるバッチを頻繁に焼く方では差が明確です。R1 V2は投入量が増えるとP9(出力上限)で頭打ちになり、フローを増やす余地が予熱でしか補えません。R2 ProはP10〜P14の余力があるぶん、大バッチでも高対流運用が成立します。
ぜひ、ご自身に合った焙煎機をお選びください。
